カウンセリングやコーチングのスキルとして「傾聴」について教えていらっしゃる方が多くいます。

もちろん、傾聴は大切なことであり「聴いてもらえている」という安心感を与え信頼関係を築くためにも重要な要素のひとつではあります。

しかし、現代における心理カウンセリングの基礎を築いたカール・ロジャーズ心理学博士は、クライアントのパーソナリティに変化を起こすための条件として、「傾聴」を挙げていないということを知る人はほとんどいません。

「傾聴」を強調するには理由がある

会話が成立するためには「聞く人」の存在は不可欠であり、聞く人が言葉を返してはじめて会話が成立します。人で溢れている都会であっても、あなたの言葉を聴いてくれず言葉を返してくれなければ、それは会話とはいえません。

目の前にいる相手が、自分にとって話を聴くべき人であれば、条件反射のごとく相手の言葉を聴くのは当然のことです。それをあえて「傾聴」が大切と言ってしまうのはは、逆説的に言えばクライアントは本来話を聴くべきひとでないと認めていることになります。

これっておかしいとは思いませんか?

もちろん、私の申し上げていることに異論がある人もいらっしゃるでしょう。

しかし、カール・ロジャーズ博士が「傾聴」を挙げなかったのは、人として、もっと言えば相手から相談をされる立ち位置にある人が「傾聴」することは大前提であり、それさえできない人は相談を受けるのは避けなさいということではないでしょうか。

そして、カール・ロジャーズ博士は、「傾聴」することで心理カウンセリングが成り立つわけではなく、相手に気づきを促す聴き方になっているわけでもない、ということも伝えたかったのではないでしょうか。

とはいえ、上のような誤解をしている方はたくさんいらっしゃることでしょう。非常に残念なことです。

心理カウンセリングに必要な要素とは?

カール・ロジャーズ博士は、クライアントのパーソナリティに変化を起こすための条件として6つ挙げています。

一つ一つを具体的に説明することは難しいですし時間も必要になるので、ここでは割愛させていただきますが、根底にあるのはカウンセラー自身の「あり方」がこの上なく重要だということです。

「医者の不養生」という言葉があります。口では立派なことを言っているが、実行が伴わないことの例えです。医者は患者の治療に忙しく自分の健康を気遣うことができないため、このような言葉が生まれました。

カウンセラーも同じです。

自分自身の心としっかり向き合えていないにもかかわらず、クライアントに対してはカウンセラー然として振る舞っている、これは本来あってはならないことです。

自分自身に対しては嘘をついているのに、クライアントに対しては自分の心に正直であることを説くなんて、本末転倒も甚だしいとは思いませんか?

テクニックだの何だのと言う前に、カウンセラー自身の在り方、自分自身に正直に生きることをすることが何万倍も大切だと、私は思っています。

だから、「傾聴」など要らないのです。