私が相談者だったころ、カウンセラーからこんなことを言われたことがあります。
「目を閉じて、相手が目の前にいることをイメージしてください」
おそらく心理カウンセリングに限らず、多くの面談・セッションで行われていることではないでしょうか。
私も当時はその言葉に従ってやってみたことがあります。
でも、イメージはあくまでもイメージです。
確かに、「想像する」ことは私たち人間の、他の動物にはない能力の一つではあります。
とはいえ、最終的に理解するために、私たちは他の動物にはないもう一つの能力を使わなければなりません。
言葉で表現することは思う以上に難しい
私たちはよく「自分のことは自分が一番よく知って言る」と表現することがあります。
しかし、それは本当でしょうか?
例えば、東大を目指している現役高校生がいるとして、有名学習塾に通っているとします。
その高校生は抜群に成績がいいのですが、学習塾の講師と決定的な違いがあります。
それは一体何だと思いますか?
当然と言えば当然のことですが、高校生は勉強の成績は優秀なものの「自分以外の人にわかりやすく教えること」ができません。
自分だけが理解していればいいのであれば、その過程の説明の仕方など考える必要はないからです。
ところが、自分以外の誰か、しかも自分より理解力が十分ではない人に対して分かりやすく説明するためには、その「表現」を工夫しなければなりません。
工夫するためには、説明することについて100%に近い理解が必要です。
翻って、私たちは自分の心の内を言葉にして、その意味するところを100%相手に伝えることができるでしょうか?
言葉にすることはあなたが思う以上に重要
私がセルフ・セラピー・カウンセリングでワード・アレンジ・マップ(通称「こころの見取図」)を作成するのには理由があります。
話す言葉は、意識して捕まえようとしない限り流れて消えてしまう、この上なく淡い存在です。
私たちは、大切な人に言葉を伝えることでさえ躊躇してしまうのに、カウンセリングという非日常の場で100%自分の思いの意味するところを伝えることは、一朝一夕にはできないことです。
だからこそ、言葉の端々を捕まえておくことで後で振り返ることが重要になってきます。
自分自身の言葉を客観的に見ることにより、カウンセリングの場では感情的になっていた自分を冷静に・真摯に受け止めることができるようになります。
イメージの中で伝えても、決して相手に届くことはありません。
それは単なる予行演習であって、いくらイメージを相手に練習したところであなたの心の中は何も変わりません。
それよりも、たとえ一言だけでも相手に自分の言葉で伝えてみることのほうが何万倍も意味のあることです。
そのためにこそ「言葉」はあるのです。
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